鉛筆画の木下晋さんが初めて手がけた 絵本「ハルばあちゃんの手」(作・山中恒 絵・木下晋)の原画展です。 木下晋氏は若くしてデッサンの才を広く認められ、独学で油彩、クレヨン画を習得。1980年代前半から大判のケント紙に20種類の鉛筆を駆使して生の深淵を覗き込むように、重い人生を描き続けてきた。 「「ハルばあちゃんの手」と題される山中恒氏の原稿を手渡された。少し内容に触れると、貧しい漁村に生まれ育った主人公のハルと勇吉が幼き日に出会う。長じて結婚し洋菓子店を営むも後継者に恵まれず一代限りで閉めざるを得なかった。だが時代に翻弄されながらも幸福な人生を全うする"大河ドラマ”の様相に、私はこれを絵本にするべくモデル探しの旅に出たのである。 能登半島の曽々木地区海岸を散策していた時、偶然漁師の老夫妻に出会った。激動の時代を寄り添う様にヒッソリと佇み八十年を超えた歳月の重さが顔に刻印され、笑顔は例えようもなく美しいのである。正に絵本のイメージがピッタリ重なった。モデルを快諾してもらって尚、”一緒に死ぬことはできんもんなあ・・・。”一瞬老夫人が見せた悲しいまでの呟きは、しかし私は見逃せなかった。だからこそモデルを依頼したのである。(絵本原画展に寄せて 木下晋)2005年9月」 2005年9月 NHK教育テレビ ETV特集「木下晋ー老いを描く」 2005年9月 NHK第1 ラジオ深夜便「老いの深みにその美を描く」 |
■木下 晋(きのした すすむ) さんのプロフィール 1947年、富山県富山市に生まれる。 画家として活躍するかたわら、東京大学工学部建築学科、武蔵野美術大学、新潟薬科大学で講師を務めている。 16歳のとき、自由美術協会展に最年少で初入選し、注目を浴びる。 やがて、画家の麻生三郎、美術評論家の瀧口修造、本間正義らの知遇を得る。 全国各地とパリ、ニューヨークなどで個展やグループ展を開く。 2003年、佐期喜美術館で個展を開く。 2004年に、「六本木クロッシング展」(束京・森美術館)、「四国八十八か所遍路文化と美術展」(東京・日本橋高鳥屋、大阪、横浜、京都巡回)、「木下晋展鉛筆画による超リアリズム」(宮山・朝日町立ふるさと美術館)、「木下晋展深いものの本質と意味」(長野・駒ヶ根高原美術館)開催。 パブリックコレクションとして、宮山県立近代美術館、宮城県美術館、湯殿山注連寺、目黒美術館、富山県教育委員会、信濃デッサン館、本間美術館、階地道美術館、町立久万美術館、池田20世紀美術館、新潟市美術館、高知県立美術館、ベネッセアートサイト向鳥、佐喜美術館などに作品が収録されている。 東京都在住 |